1. アタリ氏はこれまでに述べた四つの波に、ノマド(nomad)と呼ぶ人たちが多くの関わりを持つと見ている。ノマドは日本では耳慣れない言葉であるが、好むと好まざるに関わらず、国境を越えて自由に行き来する人々のことである。誕生以来、放浪を続けてきた人類が定住生活を始めたのは、僅か5000年前である。人間には放浪と定住と言う二つの側面があり、人間にとっての最初の自由とは移動の自由であった。民主主義と全体主義との違いは、人々が国を出たいと思った時にそうきるかどうかであり、個人の自由が尊重されるようになれば、我々は再びノマドのような放浪生活に戻ることになる。実際、携帯電話の発達で、人はどこに住んでいるかは問題ではなくなった。固定電話番号の番号からは住所が分かったが、携帯電話の番号ではそうはゆかないので、人が場所ではなく、個人として、ノマドとして見られ始めている。
    アタリ氏は、ノマドを三つのカテゴリーに分類している。第一は超ノマドと呼ぶ人たちで、ビジネスであれ観光であれ、世界中のどこへでも行くことができる1000万~5000万人である。第二は下層ノマドと呼ぶ人たちで、非常に貧しく、農村から都会へ、或いは国から国へと生きるために移動している30億人である。危機や気候変動によって移動を余儀なくされ、将来的にはその数も増えると思われる。現在、生まれた場所と違う所に住んでいる人は2億人いると言われ、気候変動の度合いによっては、40年後に55億人にもなると考えられている。第三はバーチャルノマドと呼ぶ人たちで、先進国の定住者ほぼ全員を指し、テレビやゲームなどでバーチャルなノマド生活を送っている。将来的には一部の超ノマドと、大勢の下層ノマド、その中間はほとんどいなくなるとアタリ氏は予測している。